中国LCDパネル業界の供給競争が新局面へ

中国の液晶ディスプレイ(LCD)パネル事業における巨大な市場規模と展望は、LCDパネルメーカーのグローバル最大手「LGディスプレイ」社の海外初のパネル生産事業進出を導いた。今年8月、LGディスプレイ・チャイナ社が中国広東省広州市に8.5世代LCDパネル生産ラインとなる工場の完成を正式発表、9月1日に竣工式が行われた。これにより、中国で千億元レベルのLCDパネル産業が形成されると共に、広州がLGディスプレイの中国ビジネスの中核拠点になる。

生産の現地化で競争力の向上へ
LGディスプレイ広州の8.5世代液晶パネル工場が正式に竣工した。この工場建設プロジェクトにはLGディスプレイ、広州開発区(広州凱得科技発展有限公司)及び隣接する中国最大のテレビセットメーカーのSkyworth(創維)の3社の合弁(投資比率は7:2:1)による総額40億ドルが投じられた。

2009年にLGディスプレイが広州開発区と提携合意にサインしてから既に丸5年が経っている。同社の韓社長の演説の「ここに至るまでは順風満帆ではなかった」という言葉通りの状況であった。巨額投資による重い負担と金融危機以降の急激なLCDパネル市場の冷え込みは工場建設プロジェクトに多くの不確定要因をもたらした。数年間頓挫した末に2012年5月に着工し、2年4か月の建設を経て、33万平方メートルの8.5世代パネル工場がようやく完成した。

これにより、2007年に中国で生産を開始している同社のモジュール工場や協力会社(川上・川下のセットメーカー)と合わせて、広州のLGディスプレイのパネル産業園区は約200万平方メートルの面積に及ぶ。

同工場は主に55インチ、49インチ、42インチ等の大中型テレビの液晶パネル製品を生産する予定。生産開始時は毎月6万枚のガラス基板を生産し、2016年のフル稼働時には月間生産能力が12万枚に到達する。韓社長によると、竣工したばかりのパネル工場は、これまでのモジュール工場と合わせて、パネルの生産から組立までの現地化一貫体制を確立し、中国のテレビ市場における同社の競争力が一層高まることを期待している。

また、広州のLGディスプレイパネル産業園区には、川上の部品メーカー16社や原材料サプライヤ、及びテレビセットメーカーSkyworthの生産拠点も進出予定であり、将来的に「部品生産からパネル生産、完成品まで」の協業体制の効果を発揮できる。

Skyworthグループの副総裁であり、同社カラーテレビ事業本部総裁の劉氏は、この生産ラインは、中国市場の国内パネル調達コストを削減させ、Skyworthは、これにより調達コストを5%前後削減できるとコメントしている。広州には、Skyworth以外に、康佳、海信、ハイアール、TCL等の国内テレビセットメーカーの拠点もある。

中国の国内LCDパネル業界の競争状況が変わる
広州に完成した8.5世代生産ラインは、LGディスプレイの韓国以外で初のパネル生産工場である。同社は中国LCDパネル市場の成長幅の大きい展望を睨んでこのような海外生産事業開始に踏み切ったと思われる。

データによると、2011年に中国は北米を抜いて世界最大のLCDディスプレイ市場になり、その後、更に上昇の勢いは衰えていない。中国の液晶テレビ市場が全世界で占める割合は、2011年に22.8%、2012年に25.2%、昨年は29.4%まで上昇し、今年は30%を超えると予想される 。

グローバルにおける液晶産業は停滞気味であるにもかかわらず、近年は関税増加等により中国本土のLCDパネル市場は逆に発展を遂げている。液晶パネルの売上高は、2012年に日本を抜いて世界第3位となり、1位の韓国、2位の台湾に追いつく勢いである。

現時点で、中国国内の8.5世代液晶パネル生産ラインは5本のみであり、2016年の自社供給率を計算しても71%にしか達しない。これは国内ローカルの液晶パネルメーカーにとっての事業機会をもたらしており、このことは、最近の国内パネルメーカー各社の業績予測発表からも確認できる。

先週末に発表されたBOE(京東方)社の、2014年上半期アニュアルレポートによると、上半期は市場のボラティリティが大きく、業界の競争が激化し、製品価格は下落し続けている。にもかかわらず、BOEの北京工場(5世代ライン)、成都工場(4.5世代ライン)、合肥工場(6世代ライン)及び北京工場の8.5世代ラインはフル稼働生産でも製品完売の状態を保っている。上半期の同社の売り上げは161億元で、前年とほぼ変わらない。純利益は10.42億元で前年同期と比べて21.22%増加。特に中大型サイズの製品が業績アップに貢献し、新アプリケーション製品の市場開拓も成果を得ている。また、TCL社の上半期アニュアルレポートでは、同社グループのLCDパネル事業の「華星光電」の今年上半期の売上高は85.06億元(24.8%増加)、純利益は9.81億元(10.0%増加)と公表している。

しかし、華星光電は昨年から第二の8.5世代ラインの工場の建設に着手し、重慶工場の新しい8.5世代新型半導体ディスプレイ生産ラインの建設も進められている。2015年の半ばに生産を開始する見込み。また、再起動した南京パンダの8.5世代プロジェクトは、来年3月に完成すると言われており、現地の専門家は、「将来、中国のLCDパネルの生産能力は過剰になる」と指摘する。8.5世代の生産ラインは過剰となりサイズ規格も集中しているため、競争は更に厳しくなるとみられる。

実際、主要LCDパネルメーカーは差別化した製品開発を追求している。華星光電の第2の8.5世代ラインでは、同社のカッティング技術を活かし、主流製品のサイズを増やして、酸化物半導体、OLEDなどの新技術への応用を実現する予定。BOEは、高解像度、低電力、透明ディスプレイ技術をTFT-LCDにおける応用を積極的に進めている。また、LGディスプレイは、広州の8.5世代ラインでは4Kパネルの生産も行う計画はあるとコメントしている。

 

[執筆: CMS中国リサーチ部]

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