携帯電話用チップ市場のプレーヤーの変化が加速している。テキサス·インスツルメンツ、NVIDIA社のチップ生産中止に続いて、先日、エリクソンも「コスト面と戦略的な考慮から、チップの開発を取り止める」と発表した。今後は投資をチップ事業からワイヤレスネットワーク事業へシフトしていく。エリクソンは昨年の年末に今年度の投資計画を発表してからまだ1年が経っておらず、チップ事業は残念な結果となった。
エリクソンは今年第4四半期からのチップの生産調整を決定し、「M7450」は同社の最後のチップ製品となった。新しいモデム製品「XMM7262」は中国モバイルの認証を取得し、LTEを含む通信規格を満たしている。端末メーカーの大衆市場向けのLTE設備の開発に応用できる。しかし、チップ市場の競争は厳しく、エリクソンは市場の変化と製品モデルチェンジのスピードに追い付かず、赤字続きの結果、撤退の道を選んだ。
グローバル大手の撤退に伴い、中国のローカルメーカーへの期待が高まっている。国内では支援政策が相次いで打ち出され資金面でのサポートも得られる。現地メディアによると、これまでにない規模の1500億人民元の「IC産業基金」の設立も噂されている。このほか、国際的競争力を持つ代表的な部品設計メーカーを重点的にサポートする国家政策もある。
このようなエリクソン等のグローバルメーカーのチップ市場撤退は、たしかに中国の国内メーカーにとって大きなビジネスチャンスである。
ここ数年、国内チップメーカーの海思(hisilicon)、展訊(spreadtrum)、紫光(UNIS)等の事業状況は良く、技術レベル、事業規模ともに競争力を持つまでに成長している。
中国の国内市場では、エリクソンなどの撤退によって、あとは実質クアルコム、インテルだけとの競争になった。また中国4G携帯市場の拡大により、国内チップメーカーにとっても、端末メーカーにさえ採用されれば素晴らしい未来が待っているはずだ。しかし現実はまだ厳しい。多くの国内チップメーカーの技術レベルは十分高いとは言えず、また国内携帯端末メーカーの中でも華為(Huawei)が自社製チップを使用している以外、他の中国系携帯端末メーカーは基本的にクアルコムと全面的に提携している。
ニーズの高い「広帯域、高速、高性能、低消費電力」に対応するためには、28mmのチップまたはそれ以上のスペックが必要とされるが、国内メーカー勢はまだこれらの製品を供給できず(開発済みだが量産体制が整っていないケースも含む)、携帯端末の新製品の研究開発需要に対応できない状況である。国家国務院発展研究センターの発表によると、現在、中国国内のチップ需要量の80%は輸入に依存している。中国産のチップが年々進歩していることは否定できないが、核心的な技術要素はまだ備えておらず、グローバルメーカー(クアルコム等)への依存の現状を変えるにはまだ時間が掛かりそうだ。
[執筆: CMS中国リサーチ部]
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